ユニバーサル基板を使った組立
メカトロニクスで電子基板を自作できると便利ですよね? また電子工作などで組立キットに飽きてしまって、回路基板を自作したい人にも読んでいただきたい内容です。
前回、部品の固定、グラウンドの配線、電源の配線まで説明しましたが、今回は「その他の信号線の配線」について説明します。
ユニバーサル基板における信号線の配線
ユニバーサル基板を使った信号の配線には、「ジュンフロン線」を使うと楽だと説明しましたが、なければ「ラッピング線」でも何とかなります。
グラウンドと電源の配線、そしてジュンフロン線の準備はできましたか? それでは信号線の配線をして試作基板を完成させましょう。
電子基板配線の原則
回路基板の配線の基本は最短距離ですが、最短距離を気にしすぎると、配線が難しくなったり、失敗したときに電線が無駄になったり、断線しやすくなったりしますので、妥協が必要です。
なぜ最短距離かと言いますと、電気が電線を流れる速度は光の速度と言われています。そのため配線が長いと電気が到達するのに時間がかかり、正常に動作しなくなったりするためです。
ただし、これは衛星中継やコンピューターのように周波数が非常に高い場合の話で、メカトロニクスや電子工作では、そんなに気にしなくて大丈夫です。
そこで実際には、次の写真のように電線に余裕を持たせて配線します。
上の写真では、左側は「直角配線」、右側は「なだらか配線」になります。
「直角配線」と「なだらか配線」
技術者には、上の写真の左側のように「直角配線」すべきだと言う人が多いです。たしかに見た目は美しく、整然として確認しやすいです。ただし、角が引っかかって断線しやすかったり、作業に時間がかかります。
それに対し、私は上の写真右側のような「なだらか配線」をすることが多いです。その背景には配線の長さが数センチ違うだけで正常に動作しない「スーパーコンピューター」や「超高速回路」の配線をした経験からの習慣と、断線のしにくさ、試作段階での時間の短縮のためです。
また、「なだらか配線」ですと、接続する場所を間違えたり変更したりしたくなっても、そのままハンダごてだけで配線を変えられます。
特にマイコンを使った配線では、後で配線(ポート)を変える必要がある場合が多く、「直角配線」だと、そのたびに高価なジュンフロン線が無駄になり、時間もかかります。
試作の最大の目的は、設計した回路が正常に動作するかを少しでも早く確認することです。そこで、その場合は「なだらか配線」をしたほうが、試作の目的に合っています。
しかし、試作品がそのまま販売されたり使われたりする場合は見た目の問題から「直角配線」をお勧めします。
私の場合、「直角配線」を希望されるお客さんのには、3倍の手間賃と3倍の時間を要求します。
もっとも、手配線の基板をそのまま製品に使うのは、信頼性の問題や、もしヒットして大量に作らなければならない場合などに困るため、基本的にはお勧めしていません。プロの仕事とは、そういうものです。
プリント基板(プリント配線板)の場合は、動作していた回路の配線が断線することはほとんどありませんし、見た目もユニバーサル基板を使った手配線よりも格段に美しいです。
実際の配線
さて、話を戻して、実際にユニバーサル基板を使った配線をする方法を説明します。
ラッピング線の端を2mm程度むく
まずラッピング線(ジュンフロン線)の先端を2mm程度むきます。この長さはユニバーサル基板の銅箔(ランド)の直径とだいたい同じです。
ランドの直径よりも長くむいてしまうと、隣のピン(部品の足)とショートしたり、ランドからはみ出してショートしたり断線したりしやすくなります。
ラッピング線(ジュンフロン線)をむくには「ワイヤー・ストリッパー」と呼ばれる工具が必要です。
ワイヤー・ストリッパーは、芯線の太さに適した溝を使う必要があります。ほとんどの場合、芯線の直径あるいはAWGナンバーと呼ばれるアメリカの規格の数字が刻印されていますので、その値を芯線の太さに合わせて先端2mmほどを溝から出して、握って電線の長いほうを真っ直ぐに引っ張ります。
溝を間違ると芯線に傷が付いて断線しやすくなったり、被覆(ひふく)が斜めになったりして見た目が悪いばかりでなく、ショートしやすくなったりしますので注意が必要です。
むいた電線を部品の足とランド(銅箔)にハンダ付けする
むいた芯線を部品の足とランドの両方にしっかりとハンダ付けします。両方にしっかり付けないと引っ張ったり振動で取れます。
もう片方の長さを測りニッパーまたはワイヤー・ストリッパーの奥で切る
ワイヤー・ストリッパーの刃の奥はたいてい線を切れるようになっていますので、そこを使えば持ち替えずに切れます。ただし、配線の長さが短い場合は届きませんので、ニッパーを使って測った長さに切ります。「直角配線」の場合は、直角に1回だけ曲げて届く長さに切ります。
直角配線で2回曲げると線がブラブラして断線しやすくなりますし、見た目も悪く、長さを見極めるのも難しくなりますので、曲げは1回までです。
ちなみに隣のピンや2つ先のピンに被覆線(ひふくせん)で配線するのは時計職人か米粒に字を書ける人でないと無理なので抵抗やコンデンサなどのリード線を切った残りをハンダ付けします。
そのため、抵抗やコンデンサの足の余りは捨てずにとっておきましょう。
切った先端をむいてハンダ付け
ちなみに私は左利きなので持ち手が逆です。写真に撮るとわかりにくいですが、教えるときは向かい側からになるので、非常にわかりやすいです。スポーツのインストラクターが逆向きに動いて教えてくれるのと同じです。もしかしてインストラクターに向いてる?
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