相撲ロボットもどきを制御するための回路基板を製作する手順について解説します。

部品を付ける順番
基板に部品をはんだ付けする順番は、基本的には高さの低い(背が低い)順ですが、熱や静電気に弱い部品は後回しにします。
この基板の場合は、マイコン(Arduino)を中心に、その周囲に部品の足(リード)を曲げて配線するのですが、マイコンは熱にも静電気にも弱いため、マイコンを最後に付けられるように、ピンソケットを最初に固定します。
まずピンソケットを付ける
ただし、ピンソケットのようにピン数の多い部品のピンを全部はんだ付けしてしまうと、斜めになってたりした時に修正がほぼ不可能になりますので、両端の2本だけをハンダ少なめにはんだ付けして固定します。


発光ダイオード(LED)を付ける ※抵抗入り
次にピンソケットに直結する部品の足の間隔を揃えてユニバーサル基板の穴に向きに注意して浮きがないように差し込み、足を90°または45°に曲げてハンダ付けして配線します。

そして、その後、できるだけ配線が交差しないように部品の足を曲げてはんだ付けします。
GNDのように1本のピンが複数の部品に接続される場合は、まず部品の足を隣の接続先に向かって曲げ、隣の接続先の足の直前で切って、できるだけ基板に密着するようにはんだ付けします。
部品の足を先にはんだ付けしてしまうと、どうしても基板から浮いてしまいますので、基本的には部品の足を曲げてからはんだ付けします。
ただし、最初から部品の足を曲げて配線する予定がない場合や、部品の足の長さが曲げるほどない場合は根元ではんだ付けして、部品の足を切った余りなどをはんだ付けして継ぎ足します。
部品の足を曲げて配線している途中の状態が次の写真です。部品の足を曲げる際には隣の配線とショートしないように90°または45°に曲げて基板の銅箔(穴のあいた丸い点々=ランド)の中央を通るようにします。

部品の足や部品の足を切った余りで長さが足りない場合は、銅線を錫(すず)でメッキして腐食しにくくした「すずメッキ線」を使って配線します。
すずメッキ線は「はんだ付けしやすい」と書いてありますが、はんだ付けしにくいです。なので、本当に「はんだ付けしやすい」はんだメッキ線を使うか、すずメッキ線の表面をはんだ付けしてコーティング(薄い膜で覆う)する「はんだメッキ」または「予備はんだ」をして使うか、少なくとも接続したい部分だけを予備はんだして付けます。
すずメッキ線の内部は銅線なので、熱伝導率が非常に良く、指で押さえてはんだ付けすると、ヤケドする可能性が高いので、逆作用ピンセット(つまむと開いて放すと閉じる)を使うか、放熱クリップを使って固定しながらはんだ付けすると良いでしょう。下の写真は放熱クリップを使ってすずメッキ線を固定している様子です。
スズめっき線でグラウンド(GND)を配線する


すずメッキ線を分岐させる場合、T字型に接続せずに、付けたい場所にはんだ付けし、そこにすずメッキ線をはんだ付けしてL字型に分岐させます。
こうすることにより、接続する場所に段差ができずに、美しく配線することができますが、大きな電量が流れる場所では、できるだけ切ったりはんだ付けしたりせず、一気に配線します。
こうする理由は、すずメッキ線を短く切って接続点を多くすると、それだけはんだ付け不良の確率が高まりますし、そもそもはんだは銅よりもずっとずっと電気伝導率(導電率)が悪いため、大きな電気抵抗を持ち、大きな電流を流そうとすると十分に流れなかったり、発熱したりして火災の原因になることが考えられるからです。
同様に大電流が流れる場所(モータードライバICのGNDや電力用トランジスタのエミッタやソースなど)は、できるだけ太い線で電源のGND(電池やバッテリーのマイナス極やDCジャックのマイナス端子)に一筆書きのように接続し、一点アースとするのが理想的です。LEDのGNDや信号線のGNDの配線では、そこまで気にする必要はありません。

ユニバーサル基板の角では、すずメッキ線を45°で曲げ、基板をネジで固定するための穴の周囲を避けて配線します。
このように基板の外周をGNDで囲むことにより、万里の長城のように外部からの電磁波ノイズを防ぐことができ、誤動作の防止につながります。


最後の接続点も90°または45°に曲げてはんだ付けします。このように基板の外周を上手に使ってGNDを配線すると、見た目がスッキリするだけでなく、後から回路を追加したときにGNDの配線が継ぎはぎだらけにならないで済みます。
ただひとつ注意点は、すずメッキ線ははんだの乗りが悪く、特にピカピカに光った状態だと、はんだを撥いて(はじいて)電気が通らないはんだ付け不良を起こしやすく、しかも長いすずメッキ線に熱を吸われて半田ごてでの加熱が不十分になり、見た目は繋がっている(つながっている)ように見えても実はつながっていないでハンダが被っているだけの「テンプラ」(具に衣が被っているだけですぐ取れることからこう呼ばれる)になっていることが多くあります。
テンプラを防ぐためには、両方のすずメッキ線の接点と銅箔(ランド)の全部を半田ごてを長めに当てて同じ温度まで加熱し、はんだを溶かし込むことにより、確実に電気を通すようにはんだ付けできます。
はんだ付けは「はんだを付ける」と思いがちですが、実際は「半田ごてで加熱した部分」に「はんだと銅または錫の合金を作る」作業です。
この合金層が上手にできていないと、電気を通さなかったり、すぐ取れたりして、どちらもはんだ付け不良になります。
半田ごてでハンダを溶かしてからこすりつけるなんてはんだ付けは論外です。必ず、つけたいものを全部、ハンダが溶ける同じ温度まで加熱し、そこに糸はんだを「はんだの付きを良くするフラックス」の煙が出ているうちに完了するのが鉄則です。
フラックスの煙が出なくなるまで加熱していると、合金がきちんと形成されず、電気が通らないとか、表面が焦げたり、逆に表面を残りのフラックスが覆っていないと錆びやすくなり、作って何年かすると動作しなくなります。




こうして部品の足とすずメッキ線での配線が終了したら、次は配線の残りを被覆線(電気を通さないもので包まれた電線)で配線します。
交差する配線をする
被覆線には色々な種類があり(電線の選び方と使い方を参照)、ユニバーサル基板の配線では、熱に強い「ジュンフロン線」などの「ラッピングワイヤー」を使います。
ラッピングワイヤーは芯線(中の銅線)が1本だけの「単線」で、ワイヤーストリッパーで線の先端を2mmほど剥いて(むいて)はんだ付けするだけで交差する配線をすることができます。
もちろん単線なので、何度も曲げたり伸ばしたりすると断線する可能性が高まりますが、基板の裏の配線がキッチリと固定され、曲げたら曲げたままの状態を保つので配線がスッキリ見えて確認しやすいです。
ラッピングワイヤーは直角に曲げて配線するべきだとの意見もありますが、直角に曲げると角が引っ掛かって断線しやすく、ラッピングワイヤーも無駄な長さを必要としますし、付けたい場所を移したり間違えて修正するときに不便になりますので、ケースバイケースだと思います。
もちろん直角に曲げて配線した方が確認しやすく、見た目もスッキリしますが、高周波回路や高速回路、微弱信号回路などでは正常に動作しない原因になることもあります。この程度の周波数の配線では特に問題はありません。

下の写真の例では、あえて「直角配線」と「なだらか配線」を混在させてあります。会社によってはルールがあったりしますので、それに従うようにします。
こうして完成した基板の表と裏の写真が下の写真です。長文にお付き合いくださいまして、ありがとうございました。

完成した制御回路基板
