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電源と電池について

 メカトロニクス機器を動かすためには電源が必要です。電源は普通はコンセントから電気を取る「商用電源」を使いますが、コンセントのない場所で使う機器や持ち歩く機器では電池(バッテリー)が使われます。

商用電源

商用電源(日本ではコンセント、海外ではアウトレット)

 日本では、コンセントの電気は100ボルトまたは200ボルトでプラスとマイナスが富士川と糸魚川より東は1秒間に50回入れ替わる50ヘルツの交流が、西では1秒間に60回入れ替わる60ヘルツの交流が電力会社から販売されています。

 商用電源に交流を使う理由は、変圧器(トランス)を使えば電圧を自在に上げたり下げたりできるため、同じ電力(電圧×電流)でも電圧を上げれば電流は下がるため、送電線や電柱の電線の電気抵抗による発熱損失(パワーロス)が少なくなり、結果的に発電所を遠くに設けたり、送電線の太さを細くしたりできるからです。

超小型トランスの例(トランジスター回路用アウトプットトランス)

 発明王エジソンが最初に発明した電球により、電灯は実用的なものになり、発電所が必要になりました。しかし、エジソンが普及させようとした発電機は直流発電機で、電気の需要が多い大都市に小さな発電所を多く作らなければならず、非常に効率が悪いものでした。

 しかし、エジソンの部下だったテスラは交流発電機を提唱し、結果的にエジソンが提唱した直流発電機でなく、テスラが提唱した交流発電機が普及する下剋上となりました。ここは本題から外れるのでこのくらいにしておきます。

 ところで、日本では東京電灯と関西電灯が別々の国から発電機を輸入したため、50ヘルツ[Hz]と60ヘルツ{Hz]の2種類の周波数の商用電源が広まってしまいました。

 そのため、同じモーターでも関東と関西では回転速度(1分間あたりの回転数)が違ってしまい、掃除機では関西の方が吸引力が強いものの音がうるさく寿命が短かったり、洗濯機では関西の方が早く綺麗になるものの衣類の傷みが激しかったり、扇風機では関西の方が風が強かったりと、まあこの程度なら良いのですが、レコードの音楽や歌声が早回しになったり、エスカレーターが速くなって事故が増えたりするので、関西と関東ではモーターを交換するか歯車やベルトを交換するかしないとなりません。

周波数で回転数が変わる交流誘導モーターの例

 コンセントから電気を取る利点は、電池と比べて単価が安いことと、大きな電力(パワー)を得られることです。逆にコードが邪魔だったり、外では使えなかったりしますが、重くて大きい機械は持ち運ぶことは引っ越し以外では有り得ないため、あまり問題にはなりません。

 モータの場合はこれで良いのですが、基本的に交流モーターの回転速度は周波数とモーターの極数で決まってしまい、簡単に変えることができません。ベルトコンベアの速度を変えたい場合や電車などでは非常に困ります。エアコンなどでも回転速度を変えられないと常に最大能力で音もうるさいですし電気代もかさみます。

 それから、ラジオやテレビやステレオやコンピューターなどの電子回路では、基本的に直流の電源が必要になりますので、交流を直流に変換して使う必要があります。

 直流モーターは電流の向きを回転角度によって変えなければ回りませんので、電流の向きを変えるための金属ブラシと金属整流子が必要になり、金属どうしが摩耗しますので、定期的に交換する必要があります。

 そこで、まず交流を直流に変換し、電子回路の働きで直流を再び任意の周波数に変換してブラシのない交流モーターを動かす方式がブラシレスモーターで、回転速度を変えやすく、長寿妙なDCブラシレスモーターあるいはACインバーターモーターが増えてきました。

商用電源で電子回路を動かす

コンセントの電源を低電圧の直流に変換するACアダプターの例

 電子回路を動かすためには、先ほども説明したように直流電源が必要ですので、交流を直流に変換する必要があります。しかし、そのままではコンセントの電圧は100ボルトありますので、普通の電子回路は一瞬にして壊れます。

 そこで、変圧器を使って100ボルトの交流を12ボルトとか6ボルトとかに電圧を下げ、それから整流して使いますが、この時点では、電流の向きが一定になっただけで、電圧は大きくなったりゼロになったりを1秒間に100回ないしは120回繰り返す「脈流」(脈拍のように強くなったり弱くなったりする)ですので、これを電池のように一定の電圧にしてやらないとコンピューターは動きませんし、スピーカーから「ブーン」という「ハム音」が出てしまいますので、コンデンサーなどの一時的に電気を蓄える部品を使って平らにならす「平滑」をします。

 ところが、昔はこのための変圧器とコンデンサーが重くてバカでかくて高価で大変でした。変圧器は鉄の塊にエナメル銅線を大量に巻き付けて紙で絶縁したり、コンデンサーは紙をアルミ箔で挟んで巻いて強アルカリ性の電解液を流し込むという手りゅう弾や花火などと似た構造の部品で、プラスとマイナスを逆接続したり耐電圧をオーバーしたりすると爆発したりすることもある危険な部品です。

 変圧器には、周波数が高くなるとエナメル銅線の巻き数が少なくて良くなるのと、重くて高価な鉄心の代りに軽くて小さくて安価なフェライトコアが使えるようになるという特性があるため、50ヘルツあるいは60ヘルツの交流を直流に変換して、それを周波数の高い交流に変換してからフェライトコアの変圧器で変圧すれば、小型軽量安価でしかも効率の良い直流電源を得ることができます。

スイッチング電源アダプターの例(小型軽量安価)

 そうして作られたのが「スイッチング電源」(日本工業規格ではスイッチ電源と呼びます)で、近年ではパソコンや通信関係の電子機器では一般的になっていて、メカトロニクス機器でもスイッチング電源が使われる場合がほとんどです。

電池について

乾電池

乾電池の例(左から単1、単2、単3、単4)(上:アルカリ、下:マンガン)

 電池といえば最初に思い浮かぶのは「乾電池」です。「ボルタの電池」などの初期の電池は硫酸を水で薄めた「希硫酸」の中に「銅」や「亜鉛」などの金属板を入れて電気を起こしていました。

 希硫酸は水で薄めているとはいえ、温泉の硫黄泉よりも危険で、皮膚にかかれば化学ヤケドを起こしますし、金属にかかれば錆びたりボロボロになったりしますし、電気製品にかかればショートして発火したりします。

 そこで希硫酸や強アルカリなどの「電解液」に石膏やコロイドなどのネバネバと混ぜて電解液がこぼれないようにしたものが乾電池で、わりと安全に取り扱うことができます。

 ただし、いくら乾電池でも使わないで放置したり、使い切ってもそのままにしたりすると「液漏れ」といって乾電池の中の電解液が漏れ出して、電池ボックスの周囲の金属を錆びさせて故障させたり、漏れ出た強アルカリ性の電解液が手について目をこすったりするとすごく痛くて角膜炎を起こして最悪目が見えなくなったりすることもあるので、使い切った乾電池や長時間使わない電子機器などから乾電池を抜いて、念のためビニール袋やプラスチックケースに入れたりして保管する必要があります。

 未使用の乾電池でも長期間保管すると液漏れを起こすことが多いので、近年では乾電池の底や側面に使用期限が書かれているものが多くなりました。

 また、たとえ液漏れを起こさなくても、古くなった乾電池は使える電気の量が減って、使える時間が短くなる「自己放電」を起こしますので、生ものと同じで新しければ新しいほど良いです。

 ただ、乾電池は使い捨てで、貴重な二酸化マンガンなどの鉱物と、亜鉛などの金属が使われていますので、やみくもに古いからといって捨てないでください。

 近年では、使用期限が10年先や5年先の乾電池も売られていますので、非常灯や防災用ラジオなどは、こういった乾電池をいっしょに入れておけば、いざというときに使えなかったなんてことも少なくなると思います。

 ちなみにメカトロニクスとは関係ありませんが、非常用の飲料水なども賞味期限が5年のものなどもありますので、備蓄にお勧めです。

 乾電池には、電気を使える持続時間や、一度に多くの電流を流してモーターやまつげをカールする「ビューラー」などのヒーターを効果的に使えるようにするように作られた「アルカリ乾電池」や、ラジオや懐中電灯のようなパワーを必要としないけども休み休み使えば長持ちする値段の安い「マンガン電池」、その中間の「アルカリ・マンガン電池」などの種類があり、使い道によって選びます。

 ただ、アルカリ乾電池とマンガン乾電池の違いは普通は内部は同じで、プラス極の二酸化マンガンの量やマイナス極の亜鉛の厚さとかなので、アルカリは長持ちして、マンガンは安くてパワーが小さくて休み休み使うと長く使えると思ったほうが良いでしょう。

乾電池の大きさ

 乾電池は大きいほうが使える時間が長く、大きな電流を流せますので大きなパワーが得られます。とはいえ、大きい乾電池は値段も高いので、必要に応じてどのサイズを使うかが決められています。

 日本では乾電池の大きさは大きいほうから単1から単5まであります。「単」というのは「単位電池」のことで、昔は真空管など高い電圧が必要だったので、乾電池もそれにあわせて複数の電池を直列に組み合わせて作った「積層電池」または「複合電池」があったのですが、今では一部のラジオやラジコンの送信機などに複数の電池を直列に積み上げた「006P」などの「9ボルト」の電池も使われますが、基本的に「単」が使われます。

 ただし、単1から単5という呼びかたをしているのは日本だけで、世界では別の呼びかたがあります。

 近年は充電できる電池を充電池あるいは蓄電池と呼ぶこともありますが、日本語化した時の事情がそのまま反映されたりしていて、やはり世界で通用する技術者になるためには英語力が欠かせないと痛感します。

 電池は基本的に直流電源として使えますが、電力あたりの単価が高く、充電できる電池でも充電が面倒だったり、停電すると充電できなかったりしますので、基本的には持ち歩くもの、あるいは電池交換の頻度が少なくて済むものに使うのが普通です。

1次電池(充電できない使い捨ての電池)

ボタン電池の例(アルカリ・ボタン電池)
  • 乾電池
  • 水銀電池(販売禁止)
  • 酸化銀電池
  • リチウム電池
  • 空気電池
リチウム電池の例(コイン型リチウム電池)

 まことに不経済ですが、充電できない電池は低価格で手に入りやすいため、電池交換の頻度が少なくて済む機器に使われます。当たり前ですが充電する必要がない(爆発の恐れがありますので絶対に充電しないでください)ため、買ってすぐ使えるのが利点です。

 もっとも最近のニッケル水素電池は充電を保った状態で売られていますので、すぐに使えますが電圧が普通の乾電池の1.5ボルトに対して1.2ボルトしかないため、機器によっては動かなかったり、故障の原因になることもあります。

充電池

2次電池(充電して再利用できる電池)

各種バッテリー(左から鉛蓄電池、NiCd電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池)

 まったく日本という国は、1次だの2次だの意味のわからない言葉を使いたがる変な文化で、これもひとえに日本語による教育と軍国主義をもたらした福沢○○のせいで色々と大変なことになっていますが、ここはとりあえずメカトロニクスのホームページなので置いておくとして、使い捨ての乾電池や酸化銀電池やリチウム電池などは、使うと電極や電解液が溶たりガスになって失われたりするので、使い捨てになります。

  • 鉛蓄電池
  • ニッケルカドミウム電池(ニカド電池)
  • ニッケル水素電池
  • リチウムイオン電池
  • リチウムポリマー電池

 充電して再利用できる電池は経済効果は高いのですが、充電器が必要だったり電池の単価も高いので、初期投資が必要になりますが、ものにより100回~1000回程度再利用できるので1回あたりのコストは安くなります。

 とは言っても、初期のニッカド電池などでは充電して放置したり、使い切らずに継ぎ足し充電したりすると繰り返し寿命が極端に短くなり、私が買った充電式の掃除機やドリルなどは最悪1回で使い物にならなくなったりしたので、数か月が使用期限の使い捨てみたいなものでした。

自己放電しにくいニッケル水素電池の例(エネループ)

 さすがに近年のニッケル水素電池(エネループなど)は、放置しても2年程度は容量の半分以上をキープしていたり、使い切らずに継ぎ足し充電してもそんなに悪くならないものも多くなりました。

充電できて自己放電しにくいリチウムイオン電池と充電器の例

 また、携帯電話やスマホや最近のコードレス機器に使われているリチウムイオン電池やリチウムポリマー電池は、基本的に継ぎ足し充電しても「メモリー効果」と呼ばれる充電を開始した時点の容量を記憶し、1時間使えるはずのものが30分しか使えなかったり、数秒しか使えなくなったりすることは、ほとんどなくなりました。

 ただ、現在でも安い充電式のシェーバーなどはニッケル水素電池を使っていてメモリー効果で数秒しか髭剃りができないシェーバーになったりするので注意が必要です。

普通のニッケル水素電池

 メカトロニクス機器で充電可能な電池を使う機会は少ないと思いますが、全然ないとは言い切れないのと、今や生活に欠かすことのできないコードレス機器を選ぶためにも知っておいて損はありません。