自動制御とリレー回路

古いプログラムロジックコントローラーの写真
古いプログラムロジックコントローラー

 自動制御とは、センサーなどを使って、人間の五感に相当するセンシングをし、人間の脳に相当するコントローラーで状況を判断し、モーターや電磁石などを人間の代わりに自動的に制御するものです。

自動制御とエレベーター

 古くは、自動制御はエレベーターに多く利用されてきました。1970年代ころまではデパートなどのエレベーターには、エレベーターを運転する「エレベーターガール」または「エレベーターボーイ」が乗っていて、行き先階を告げると、それを暗記して、安全を確認してエレベーターの扉を閉め、制御レバーでモーターを動かし、指定の階の床にビッタリと止めて安全を確認し、その階の簡単な案内をして扉を開けていました。

 その後、人件費の削減やエレベーターガールへのハラスメントの多発で、次第に手動運転は姿を消し、エレベーターのレール(三方枠)に取り付けたリミットスイッチなどのセンサーと電磁石でスイッチを切り替える「リレー」を使った制御回路による自動運転が行われるようになりました。

 当時は、そうしたエレベーターを「自動エレベーター」と呼んでいましたが、近年ではエレベーターは自動が当たり前になったため、単なる「エレベーター」と呼ばれるようになりました。

 それ以前にもリレーを使った電子計算機とかは存在していましたが、エレベーターの普及により、リレーによる制御回路は一般的になり、他の機械などでも使われるようになりました。

リレーからトランジスタへ

トランジスターの写真
トランジスター

 リレーによる制御回路は、電磁石によるスイッチ切り替えを戻すためのバネや金属接点の酸化(さびること)や摩耗などにより寿命が短く、リレーによりますが10万回ていどの寿命があり、毎日10時間以上も使われているようなものだと半年ほどで寿命になり、目的階に到着しなかったり、途中階に停止したり、ドアが開かなかったりなどのいわゆる「閉じ込め」が発生し、社会問題となりました。

 当時は電話回線による自動通報装置とかもなく、非常呼び出しボタンを押すと管理人室などでベルが鳴るのですが、デパートなどの商業施設やオフィスなどではともかく、夜間に管理人の居ないマンションなどでは長時間の閉じ込めが発生して大変なことになりました。

定期点検

 そこで、法律でエレベーターなどの建築設備は定期的に点検することが義務付けられ、リレーなどの寿命の短い部品は寿命の半分程度の期間ごとに予防的に交換するようになりました。

突発故障

 それでも予期しない突発故障や偶発故障は発生し、エレベーターの制御回路は当時普及を始めたトランジスターを使った電子回路に置き換えられました。

半永久的寿命

 トランジスターは、ゲルマニウム(当時)やシリコン(近年)などの固体の元素に不純物を混ぜて溶かして、ゆっくり引き上げて冷やしながら固めた固体で、金属のケースに入れられ、可動部分もなく、酸化による劣化も防げることから寿命は半永久的と言われ、故障をきわめて少なくすることができるようになりました。

 実際には、トランジスターのケースとリード線の隙間から湿気が入り、故障したりするのですが、それでも数十年は故障することなく使えますので、半永久的と言っても良いでしょう。

トランジスターから集積回路(IC)へ

ICの写真
ICの例

 その後、アメリカの月ロケット計画の「アポロ計画」によって開発されたトランジスターを使った電子回路を小さく軽く作る「集積回路」が発展し、制御回路を小さく安く作れるようになり、エレベーター以外の機械にもどんどん使われるようになりました。

集積回路(IC)からマイコンへ

マイクロコンピューターの写真
マイクロコンピューターの例

 集積回路は小さくて軽くて安く大量生産できるのですが、ちょっとした変更や機能追加でも最初から設計をやり直して作らなければならないため、2年程度の期間を要するものでした。

電卓の普及

 折しも、1970年代後半になると、「電子式卓上計算機」いわゆる「電卓」が普及しはじめ、「電卓戦争」と言えるほどの生産競争が起きました。

 しかし、初期の電卓はトランジスターや出始めの集積回路を使って作られていたため、機能を追加するたびに集積回路の設計から始めなければならず、これでは勝負にならないと感じた日本のベンチャー企業が、当時は大型だったコンピューターを集積回路で小型で安く大量に作れないかと考え、開発を始めて集積回路を作ってくれるメーカーを探したところ、電卓用の集積回路で儲かっていた半導体メーカーはことごとく、その依頼を断ってしまったのです。

マイコンの誕生

 ところが、アメリカに渡ったベンチャー企業の経営者は、当時最高峰の半導体メーカーから独立して半導体メモリーを主製品として勝負しようとしてた同じベンチャー企業の半導体メーカーと共同開発することで合意を取り付けたのです。

インテル

 そのアメリカのベンチャー企業こそ、現在パソコンのCPUメーカーとしてトップを走る「インテル」の前身でした。残念ながら日本のベンチャー企業は倒産してしまいましたが、現在でも日本の半導体メーカーに多大な功績を残しています。

マイクロコンピュータ

 こうして誕生したマイコンは、正式には「マイクロコンピュータ」と呼ばれ、メモリーを外付けにするものを「マイクロプロセッサー」、コントローラーに適した改良をしたものを「マイクロコントローラー」と呼び、基本的には同じようなものなのですが、多くの呼び方があり、混乱の元になっています。

プログラムロジックコントローラ

プログラムロジックコントローラーの写真
プログラムロジックコントローラー

 ところで、マイコンは動かすプログラム(ソフトウェア)を作るのに、当初は機械語(またはバイナリーコード)と呼ばれる二進数の命令や命令の略号を使ったプログラムを開発しなければならず、近年でもC言語と呼ばれる英語をベースにした難解なプログラム言語を覚え、それを組み合わせてプログラムを作らなければならないなど、普通の機械技術者にとって、とっても大変なものでした。

 そこで、機械技術者にリレー回路の開発手法で手軽に自動制御が可能なプログラムをマイコン内部に最初から入れておき、リレー回路を使うように簡単な操作で使える「シーケンサー」や「プログラムコントローラー」とも呼ばれる制御装置が開発され、近年ではほとんどの機械にコントローラーとして使われています。

プログラムロジックコントローラの欠点

 プログラムロジックコントローラは簡単に使えるのは良いのですが、誰でも買え、割と簡単に使えるため、画期的な機械を開発しても、制御にプログラムロジックコントローラを使っていると、簡単に真似されてしまうどいう大きな欠点があります。

  • 簡単に真似される
  • お金がかかる
  • 数値計算が得意でない
  • 無駄な処理が多く高速処理に向かない
  • メーカーごとの互換性がなく簡単に乗り換えられない

 また、機械を売る度にプログラムロジックコントローラのメーカーから数万円から数十万円もの装置を買い、納期などでメーカーの言いなりになるしかなく、他社への乗り換えも困難など、とっても立場の弱いものです。

マイコンを使った自動制御

マイクロコンピューター各種の写真
マイクロコンピューターを使った自動制御

 そこで、一部の特殊な機械では、マイコンを使ったり、数値制御を必要とする機械ではNCコントローラー」などの数値制御を得意とするコントローラーを使います。

マイコンを使う例

  • 大量生産する場合
  • 企業秘密を守りたい場合
  • 小さく軽く安くしたい場合

 ただし、マイコンを使うことの欠点も多くあります。利点の裏返しですが、次のようなことです。

  • 幅広い知識が必要(簡単に使えない)
  • 安っぽく見えてしまう(儲からない)
  • 使うのが面倒(周辺回路を作らないとならない)

 マイコンそのものは数十円から数千円で買えてしまいますので、マイコンを制御回路に使った製品は、プログラムロジックコントローラを使った制御回路より見劣りがすることがあります。

 しかし、ほとんどのマイコンは書き込んだプログラムを外部から読み出したり書き換えたりすることを不可能にする「コードプロテクト機能」を備えていますので、企業秘密が漏れたり、コピーされたりすることは極めて少なくなります。

 簡単に開発できないプログラムや回路なども、日本には専業にする多くの「ソフトウェアハウス」や「システムハウス」があり、リーズナブルな費用で外注することも可能ですが、外注した場合、情報漏洩や外注先が廃業したり倒産したりするリスクもありますので、理想的には社内で複数の技術者を育て、分担して開発するのが理想です。

 ただし、外注するにしても採用するにしても、その能力はピンキリで、採用面接や外注先選びは容易ではありません。

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